形成外科
診療科の特徴
当科では山形県の中核病院にある性格上、広く治療を行っています。唇裂、口蓋裂、小耳症、手足の奇形、尿道下裂、臍ヘルニア、眼瞼下垂顔面神経麻痺に伴う変形、乳房再建、胸壁再建、母斑・血管腫に対するレーザー治療、顔面骨骨折などの外傷、熱傷治療等を行っています。
術後の瘢痕及び瘢痕拘縮を含め、不安な際は来院の上、ご相談下さい。
現在山形大学からの非常勤体制ですが、大学と連携し必要な入院治療は山形大学で行います。
主な疾患
形成外科とは? …美容外科との違い…
形成外科というと、未だ多くの人が美容外科と思っていられるようです。これは必ずしも全くの誤りではないのですが、もう少し形成外科について知っていただきたいので、この場を借りて説明いたします。
定義は…形を作る科。先天的、あるいは後天的疾病によって生じた変形を、形態的ならびに機能的に、修復再建する事を目的とした外科学の一分野…となっています。対象となるのは、内臓を除く体表面のすべての部位の組織・器官の変形、欠損あるいは醜形ですが、最近は各科との共同手術等でその守備範囲が広くなってきています。具体的には、1. 先天異常(頭部・顔面の変形、唇裂、口蓋裂、耳の変形、手足の異常、漏斗胸、尿道下裂など外陰部の変形、など)、2. やけど、3. 外傷(顔面・手足など、骨折を含む)、4. 瘢痕・ケロイド、5. 皮膚腫瘍(良性、悪性)、6. 皮膚潰瘍、7. その他の変形・疾病、8. 美容外科、などが対象となっています。
さて、形成外科イコール美容外科が全くの誤りではない、ということはこれでお分かりかと思いますが、美容外科はたしかに形成外科の一分野です。したがって、技術的には形成外科医は美容外科手術ができます。しかし、山形県立中央病院のような公立病院では、原則として保険外診療が認められていないため、純粋な美容外科手術は行っておりません。しかし美容かそうでないかの判断が難しい場合もありますので、もしお悩みのことがありましたら、一度受診して下さい。
やけどをしたときのワンポイントアドバイス
やけどは、一人の人間が平均して1年に3回は受傷するといわれています。その殆どは処置のいらない軽いものなので、気づかないうちに治ってしまっています。それでも、比較的大きいやけどを負ったときには、以下の注意点を守ったうえで、病院を受診して下さい。
- やけどの傷は水で冷やす:流水で10数分冷やして下さい。冬期間は低体温に十分注意して下さい(特に子ども)。やけどの範囲が広い(子どもは片腕以上、大人は片足以上)場合は、軽く流水で冷やした後、早めに病院を受診して下さい。
- 氷では絶対に冷やさない:もっとも皆さんが間違うことです。むしろ傷は深くなります。また、子どもは低体温ショックに陥ることがあります。
- 肌着を乱暴に脱がせない:水疱膜は傷を保護する作用があります。この水疱膜を破らないように肌着はゆっくり脱がせて(場合によっては切る)下さい。
- 病院を受診する場合は、傷に市販の薬を塗ってきたりしない:薬の使い方によっては、仮にやけどに効くとされているものでも傷を深くすることがあります。
- やけどは予防が第一:やけどは殆どが不注意によるといっても過言ではありません。特に小さな子どものいるお家では、やけどをする危険性のあるものを子どもの手の届かないところに置くなど、十分に注意して下さい。やけどの患者さんの中で一歳前後の子どもの占める割合が最も多いのです。
唇裂・口蓋裂の話
唇裂とは
上口唇(うわくちびる)が生まれつき割れている状態のことをいいます。このとき、同時に鼻の異常があることが普通です。以前は「兎唇」とか「みつくち」などといった呼び方をされていましたが、現在は、唇裂という言葉が使われています。
口蓋裂とは
口の中の天井、つまり上あご(口蓋)が生まれつき割れている状態のことをいいます。口蓋裂は、口を開けなければ形の異常が見えないので、見た目の問題は、唇裂に比べて少ないかもしれません。しかし、最も大切なのは、言葉の問題であり、適切な治療が必要です。
治療時期
手術時期や方法に関しては施設によって多少異なりますが、当科では、唇裂はおよそ生後3ヶ月頃に行っています。口蓋裂に対しては、およそ1歳から2歳の間に手術をしています。口蓋裂手術で言葉の獲得が不十分な場合には、言語訓練を行うと、かなりよくなります。鼻の修正は、程度にもよりますが、4歳から5歳頃に手術しています。ところで、唇裂、口蓋裂は口唇、鼻などの柔らかい組織以外にも、顎骨(あごの骨)にも変形がおよんでいることが多く、このため成長にあわせて数回の手術が必要となります。また、歯の矯正治療なども必要となりますが、変形の程度などにより治療時期は異なります。
顔面の骨(上・下顎)の骨折・異常について
骨折、というと整形外科を連想される方が多いと思いますが、顔面の骨の骨折は形成外科で治療します。一口に顔面の骨と言っても一つではなく、鼻骨(鼻の骨)、頬骨(ほほの骨)、上顎骨(上あごの骨)、下顎骨(下あごの骨)などが顔面の骨を構成しており、これらの骨折を形成外科で治療しています。顔面骨骨折は、専門医でないと診断が難しいことがありますので、何らかの原因で顔面をぶつけたりした後、顔面の痛み、しびれ等があり、口が開けにくい、ぶつけたほうの顔の表情が乏しい、物が二重に見えるなどの症状があった場合には、受診して下さい。骨折が認められれば、手術による整復が必要となります。
人の顔はそれぞれの個性の現れですが、時に顔が長い、顔が曲がっている、下あごが小さい、歯のかみ合わせが悪いなどの理由で受診される方がいます。これらは時として顔面の骨の発育の異常等により引き起こされていることがあります。
乳房再建について
乳腺外科と連携し治療に当たります。
形成外科単独で行う入院を伴う再建については山形大学で行います。
レーザー治療について
レーザーは「あざ」の治療に今やかかせない治療法の一つとなっています。レーザーには何種類かあり、その特性によって、対象となる疾病が異なります。また、その多くが現在もなお保険診療対象外となっているのが現状です。
当科で使用しているレーザーは「赤あざ」用で、保険診療が認められています。レーザー装置の設定上病変を選択的に照射するようになっていますので、適切な出力で治療が行われれば、照射後の醜い傷跡などの問題は殆どありません。対象となるのは、単純性血管腫(いわゆる赤あざ)です。通常は、初回に小範囲で試験照射を行い、適切な出力を設定し、2回目から本照射となります。また、同一の病変に対し複数回照射したほうが効果があるとされています。したがって、治療は数回に及ぶことが多く、期間も数ヶ月を要することもあります。通常、レーザー治療は麻酔が不要で、外来で行いますが、小さな子ども、病変が広範囲、目の周囲などの特殊部位、などの場合には、時として麻酔をかけたり、麻酔法によっては入院が必要となることもあります。
形成外科のトピックス
形成外科は、日夜新しい分野へ発展しつつある科といえます。最近では、皮膚の培養、組織の培養(Tissue Engineering)などがマスコミに取り上げられるなど注目を浴びています。特に培養皮膚は、一部臨床の場で応用されつつあります。もう少し日常的なところでは、ケロイド、陥入爪(巻き爪)などの治療材料・器具も次々に開発され、患者さんに苦痛を与えることなく治療することも可能となりました。今後、当科でも積極的に最新の知識・技術を修得し、患者さんに還元できるよう努力して参ります。また、新しい情報が入り次第随時報告いたします。
主な術例・治療例(2023年1月1日~12月31日)
疾患大分類手技数 | 入院 | 外来 | 計 | ||||
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全身麻酔 | 腰麻・ 伝達麻酔 |
局所麻酔・その他 | 全身麻酔 | 腰麻・ 伝達麻酔 |
局所麻酔・ その他 |
||
外傷 | 14 | 2 | 1 | 28 | 45 | ||
先天異常 | 3 | 3 | |||||
腫瘍 | 23 | 56 | 79 | ||||
瘢痕、瘢痕拘縮、 ケロイド |
2 | 2 | 3 | 7 | |||
難治性潰瘍 | 1 | 1 | 1 | 1 | 4 | ||
炎症・変性疾患 | 2 | 10 | 12 | ||||
美容(手術) | |||||||
その他 | 1 | 1 | |||||
Extraレーザー治療 | 86 | 86 |
スタッフのご紹介
氏 名 | 卒業年・資格 | 専門・研究分野 |
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山形大学形成外科からの非常勤体制です |