基本方針
患者さんが適切な治療を受けるためには適切な診断が必要です。病気の診断は臨床各科の医師が視・触診や血液検査、レントゲンやエコー、CTなどの画像検査などを総合してすすめますが、病理診断科の行う「病理診断」は最終診断として大きな役割を果たしています。
患者さんの身体から採取した細胞や組織を顕微鏡で観察して病気の診断をするのが病理診断で、病理診断を専門とする医師が病理医です。病理診断には細胞診断、生検組織診断、手術標本の組織診断、手術中の迅速診断、病理解剖があります。これらの病理診断は主治医に報告され、治療方針の決定に重要な役割を果たすことになります。また、病理解剖所見の蓄積は医学の進歩にも大きく貢献しています。
病理診断には正確性と迅速性が求められます。山形県立中央病院病理診断科では原則として細胞診断、生検組織診断は受付から2-3日以内、手術標本の組織診断は1週間以内、手術中の迅速診断は10-30分、病理解剖診断は2-5ヶ月で主治医に報告されます。
特徴
細胞診断 | 尿や痰の中にある細胞や子宮頸部の細胞、乳腺や甲状腺のしこりにある細胞を採取して癌細胞がないかどうか調べます。 |
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生検組織診断 | 胃や大腸の内視鏡検査の際に組織の一部を採取したり、乳腺、皮膚などのしこりから組織をメスで切り取って採取します。細胞診断よりも多くの情報が得られます。 |
手術標本の組織診断 | 手術で摘出した臓器・組織を観察して病気の拡がりや性格、転移の有無などを調べます。主治医は報告に基づいて追加治療の必要性を判断します。 |
手術中の迅速診断 | 手術中に組織の一部を切り取って病理診断を行います。主に病巣が取り切れたかどうか、癌の転移がないかどうかを調べます。 |
病理解剖 | ご遺族の了承のもとに、ご遺体の解剖を行います。病理解剖によって生前の診断や治療が正しかったかどうか、治療の効果がどれくらいあったのかなどを調べます。 |
地域医療 | 県立河北病院の病理診断の一部を担当しています。専用ネットワークシステムを構築し、テレパソロジー(遠隔術中迅速診断)も行っています。これにより、常勤病理医が不在の病院でも、手術様式や切除範囲の変更が手術中に可能となります。 |
主な疾患
それぞれの検査の対象となる主な臓器、疾患は以下のとおりです。
- 細胞診断:乳腺、甲状腺、子宮、肺、体腔液、リンパ節など
- 生検組織診断:胃、大腸、肺、子宮、乳腺、前立腺、皮膚など
- 手術標本の組織診断:胃癌、大腸癌、食道癌、肝臓癌、膵臓癌、肺癌、子宮癌、卵巣癌、乳癌、甲状腺癌、前立腺癌、膀胱癌、腎臓癌、喉頭癌、肉腫、脳腫瘍など
- 手術中の迅速診断:消化管や乳房温存手術などの切除断端、センチネルリンパ節など
- 病理解剖:死亡例